人間は欲しいものではなく、「ふさわしいもの」が与えられる
こちらの記事では、コーチングの理解と実践に必要不可欠な必須キーワード「コンフォート・ゾーン」について解説をします。
ステップ1: コンフォートゾーンとは?
まずは、「コンフォートゾーン」という考え方の話からスタートしましょう。
コンフォートゾーンとは、私たちが無意識に「居心地がいい」と感じる場所のことです。
私たちが深層意識にもつ「馴染んでいる領域や空間」のことです。
私たちは潜在意識の働きによって、無意識にコンフォートゾーンの世界に身を置き、安住しようとします。
あなたは、いつも同じような場所にばかり行ったりしていませんか? いつも同じような人とばかり会ったり、懇意になってはいませんか?
あなたの成績は、学校のテストの点数でも、営業成績などでもそうですが、いつも同じような結果を出してはいませんか?
あなたの年収や生活水準は、これまで大体一定を保ってきたのではありませんか?
これらの無意識の行動や判断こそが、コンフォートゾーンの働きと正体です。
人生がなかなか変わらないと感じたり、悲観する人が大勢います。その答えとは、「人の脳は、現状維持が最大のお仕事」だからです。
ここの理解が、コンフォートゾーンのスタートアップです。
そして、現状維持しようとする中身、人生の在り方や生活の質を決定しているものが、このコンフォートゾーンなのです。
ステップ2: コンフォートゾーンの持つ強力な働き
コンフォートゾーンを維持しようとするマインドの働き、無意識の判断と行動は、それはそれは半端ではなく強力です。
コンフォートゾーンの持つ、人生や生活をコントロールする能力とその強力さ、私たちの人生を左右し、ときに翻弄もするこのコンフォートゾーンの働きについて見てみましょう。
学校のテストで、いつも数学のテストの点数が60点くらいの人がいたとしましょう。
学校のテストは、当たり前ですが、テストを作るのは数学の先生ですから、ある程度の出題範囲は決まっているかもしれませんが、それでもどんな問題が出されるのか、私たちには分かりません。
自分がたまたまよく覚えていた方程式やその解き方に関する問題が出題されれば、テストの点数は上がるでしょうし、全然理解ができていなかった部分が出題されたら、悲惨な結果に終わることもあります。
いつもはなぜか大体60点くらいを取る人が、運よく90点を取れてしまったとします。そういうことって、まれにありますよね、
そうすると、ものすごくうれしい。親にも褒められるかもしれませんし、学校の先生も「よくやった」と褒めてくれるかもしれません。仲の良い友だちだって、「急にどうしたの? すごいすごい」と言ってくれるでしょう。
ものすごく素晴らしいことです。大変に喜ばしいことです。(表面上では?!)
喜んでいるのは、あなたとあなたの両親や学校の先生です。
しかし、あなたの潜在意識は、まったく喜んではいません。ここがポイントなのです。
なぜかというと、普段から60点を取っている人の潜在意識とは、60点を取ることがコンフォートゾーンであって、それが自分らしく居心地がいいと考えているからです。
ここからが信じられないようなことが起こります。
コンフォートゾーンから外れた事態が生じると、潜在意識は慌てます。この場合、自分らしくない90点を取ってしまったことです。
すると潜在意識は、次回のテストで30点を取るように働き出します。30点を取ることで、全体としての平均が60点になり、コンフォートゾーンが維持されるからです。
潜在意識は、コンフォートゾーンを維持するために、わざと低い点数を取らせたのです。
潜在意識は、コンフォートゾーンを維持するため”だけ”にエネルギーを生み出し、創造性を発揮します。
潜在意識にとって、善悪の判断はまったくありません。
あるのは、自分らしさを維持すること。コンフォートゾーンの中身を現実世界に起こすことです。
ここでは学校のテストでの点数を例に挙げましたが、この潜在意識とコンフォートゾーンの働きとメカニズムは、私たちの身の回りの環境すべての事柄に当てはまります。
仕事やビジネスでの成績と成果、生活水準や年収、環境と人間関係、健康状態など、すべての事象です。
私たちは無意識にですが、コンフォートゾーンの世界に安住し、それを絶えず求め、万が一そこから外れるような事態が起これば、それは潜在意識の非常に強力な働きかけによって、自動的に軌道修正が加えられます。
コンフォートゾーンの働きは、きわめて精緻かつ純朴なものです。
人間は欲しいものではなく、自分に「ふさわしいもの」を手に入れる。
「ふさわしいもの」とは、コンフォートゾーンのことです。
ステップ3: コンフォートゾーンのメカニズム
コンフォートゾーンの持つメカニズムについて、重要な点は2つあります。
- コンフォートゾーンの生み出すエネルギー
- コンフォートゾーンの決まり方
① コンフォートゾーンの生み出すエネルギー
潜在意識は、コンフォートゾーンの中身を維持するため”だけ”に必要なエネルギーのみを生み出す。
このエネルギーのことを「モチベーション」といいます。
私たちの持つ潜在意識は、コンフォートゾーンを維持する分のエネルギーしか生み出しません。
これがモチベーションの正体です。
世間一般の解釈では、モチベーションが先にあって、成果や現実が後に起こると考えられています。
しかし、コーチングではそのような解釈はしません。
コンフォートゾーンが先にあって、その中身を維持するためにモチベーションが起こります。そしてその結果として、成果や現実が表れます。
- モチベーションとは原因ではなく、結果の方なのです。
- モチベーションとは、起こすものではなく、”起きる”ものなのです。
私たちの人生とは、コンフォートゾーンというレールの上を歩いているにすぎません。

② コンフォートゾーンの決まり方
ところで、このコンフォートゾーンとは、何によって決まっているのでしょうか。
ここで、コーチングにおける非常に重要なマインドのメカニズムをご紹介します。
自分が受け入れた「映像」「言葉」「感情」 ⇒
セルフイメージ ⇒ コンフォートゾーン ⇒
成果・パフォーマンス・現実
自分が過去の人生の中で受け入れてきた強い感情を伴う思考、言葉、映像が「セルフイメージ」という自分が自分に対して持つ自分像・自我像を形成し、そしてそれがコンフォートゾーンの中身と境界を決定し、それに伴って、現実世界が起こり、創造されていきます。
自分が過去に受け入れてきた思考というのは、要は、「自分に対する思い込み」のことです。
人は、自分が思ったとおりの人生を引き寄せ、創造し、自分が思ったとおりの人間になります。逆に言うと、その「自分に対する思い込み」さえ変えることができれば、人生を変えることができるようになります。
ステップ4: コンフォートゾーンの作り方
コンフォートゾーンの中身さえ変えることができれば、人生は変わります。
そしてそのコンフォートゾーンの中身を決定しているのは、自分自身に対する思い込みであり、セルフイメージそのものです。
では、その自分自身に対する思い込みとは、どのようにすれば効果的に現在の状態から置き換えていくことができるのかというと、それはコーチングの場合、3つの方法があります。
- ビジュアライゼーション
- アファメーション
- セルフトーク
① ビジュアライゼーション
ビジュアライゼーションとは、「映像を主なものとして、自分が望む世界をリアルに想像・イメージすること」です。
五感を総動員して、臨場感豊かに望む世界を、コーチングの場合はゴールの世界のことですが、その世界を脳内で強い情動を伴って、目の前の現実世界のごとくありありとリアルに「視覚化イメージ」することです。
人間の脳や潜在意識には、リアルな思考を自分にとっての真実、あるべき現実として受け入れ、コンフォートゾーンとする性質があります。
ですから、ビジュアライゼーションは、セルフイメージやコンフォートゾーンを現状からゴールの世界へと置き換えるのに、最適かつ非常に強力な手段となるのです。
ビジュアライゼーションの詳しい解説はこちら
② アファメーション
アファメーションとは、ルールにしたがって書かれた「ゴールの世界を緻密に表現する文章」を声に出して読み上げ、ゴールの世界を脳内でリアルに再現し、ゴールの臨場感を高め、ゴールの世界を自分にとっての真実とする技術のことです。
- 私達は広々とした〇LDKの○○マンションに暮らしている。優雅な書斎、妻の絢爛な部屋、シンプルな寝室、スッキリ爽やかなリビングとアイランドキッチン、息を呑むほど美しい景色と夜景が眼下に広がっている。
- 私は抜群のルックスとスタイルの良さ。人々が思わずハッと目を留めてしまう、そんなオーラと装いと佇まい。卓越したファッションセンスがあり、お洒落でカッコよく美しく、常に人々を魅了し魅(ひ)きつける存在で、誇らしい。
- 個人的なものであること
- 肯定的な表現のみを使う
- 現在進行形で書く
- 達成しているという内容にする
- 決して他人との比較をしない
- 動きを表す言葉を使う
- 感情を表す言葉を使う
- 記述の精度を高める
- バランスをとる
- リアルなものにする
- 秘密にする
世の中には、セルフイメージを理想の状態にするための技術・方法論が幾多数多に存在しますが、アファメーションほど確実で強力なセルフイメージを作る技術は、他にそうそうありません。
アファメーションの詳しい解説はこちら
③ セルフトーク
セルフトークとは、日々、「自分自身に語りかける言葉」のことです。
それは独り言・脳内会話もあれば、他人との会話の中で自分に対して言及している言葉もあります。
何か失敗を犯したとき、「またやってしまった」「自分はいつもこうなんだ」「いつも同じ失敗ばかりしてるんだ」などというものです。
うまくいったとき、「やればできる」「自分は成功する人間だ」「私は○○に恵まれている」「自分はツイてる」「おれは最高にかっこいい」などがそうです。
特に、脳の注目すべき特性として、潜在意識は声に出した言葉を強く信用する性質があります。
ですから、例えば友人との会話の中で、「いつもお金に困っているよ」とか、「自分はツイてないんだ」「なかなかいい恋人に巡り会わない」「いつも病気がちだ」と口癖のように言っていれば、自分の言葉を一番間近で聞いているのは自分自身の脳と潜在意識なのですから、本当にそのようなマインドとコンフォートゾーンと、そして人生を築いてしまいます。
言葉がマインドをつくり、言葉が私たちの人生を定義し、言葉どおりの人生を創造するのが脳の働きだということです。
「セルフトークを制する者が、人生を制する」と言って差し支えありません。
セルフトークの詳しい解説はこちら
「ビジュアライゼーション」「アファメーション」「セルフトークのコントロール」こそが、コンフォートゾーンを作る秘訣、その極意となります。
これらを真摯に学び、愚直に実践すれば、コンフォートゾーンは確実に現状から理想の世界やゴール側へと移行し、書き換わり、人生を自在にわがものとすることができるでしょう。
心理的盲点である「スコトーマ」とコンフォートゾーンとの関係についてはこちら