ゴール設定

”NO.1”というゴールのメリットとデメリット

ゴール設定に関するテクニックのひとつで、「ナンバーワンを目指す」というゴールをしばしば見かけます。

このNo.1ゴールとは、一体どういったカラクリで、どのように人生やマインドに作用し、結果としてどんな成果が得られるのかを考察してみたいと思います。メリットとデメリットについて比較・検討してみましょう。

ちなみに、私自身のスタンスを先に述べておくと、私は”No.1ゴール”に対して否定的な立場です。

これは、私が敬愛するコーチングの創始者であるルー・タイスがそのようなスタンスであり、ルータイスメソッドをつきつめていくと、自然とそのような結論に行き着きざるを得ないからです。


潜在意識を覚醒する”No.1”というゴール


結論から先に申し上げると、No.1ゴールには力があります。

力があるというのは、潜在能力を引き出し、脳を本気にさせ、このゴールを真摯に目指し続けることができれば、間違いなく、ある程度の大きな成功と成果を掴み取ることができます。

”ある程度の”という含みを差し込んでいるのは、このゴールにもデメリットが存在するからです。これに関しては後述します。

まずはメリットの方から考察してみましょう。


潜在意識が普段は隠された真の能力を発揮し、圧倒的な潜在力とエネルギーを引き出し、私たちが高いゴールに向かって邁進していくための条件とは、コーチングにおける「ゴール設定の3つのルール」そのものなのですが、じつは、これは万人向けというか、普遍性を考慮したうえで、このようなルールになっています。

【ゴール設定の3つのルール】

① ゴールは「現状の外側」に設定する


② 心から望むこと、成し遂げたいことをゴールとして設定する

③ ゴールは人生(や組織)の各方面にまんべんなく設定する



このルール自体に誤りはまったくありません。潜在意識の働きから見て、非常に理にかなったものです。そして、誰にとっても親しみと好感が持てますし、大変わかりやすいというのも特徴です。

本当によくできています。

ただ、より本質的で、潜在能力に直接的にアクセスするような、いわば、なりふり構わず、きれいごともなく、最高レベルに潜在意識を覚醒させてしまうようなゴールの設定方法であるかというと、そうではありません。

普遍性を重視した、倫理観と社会性のあるという意味合いが多分に含まれていますから、当然ですね。

ですので、本当に”上”というか圧倒的な極地を目指そうとするのなら、このルールでは不足です。オリンピック競技の世界とか、スポーツアスリートなどの本当に厳しい世界を目指すとなった場合、この3つのルールに加えて、もう一歩の工夫とエッセンスがどうしても必要になってきます。


いい悪いは別として、この世で最高レベルに潜在意識と能力を覚醒させるゴールのひとつは、「No.1を目指すゴール」です。

”ひとつは”と含みを持たせたのは、当然他にもあるにはあります。あまり一般的ではありませんが、例えば、「解脱(げだつ)を目指す」とか、「完全に苦を手放す」「この世の真理を悟る」などがそれに当たります。

インド古来の伝統的なヨガなどは、このすさまじいゴールのために、編み出された秘法です。

関連記事:「最強の潜在意識の書き換え法」

さらに、「この世のありとあらゆる知識と出来事を見通す」なんてのも、本気で目指すことができれば、可能性は大いにあります。


No.1ゴールに、どうしてそのような力があるのかというと、潜在意識が最も確実に能力開発される条件とは2つ、「現状からゴールの世界がとても離れていること」と「ゴールの世界がとてもリアルに、明確であること」という2つの条件が整っている必要があるからです。

この2つの条件が揃っていないと、本当の意味での潜在能力・潜在意識開発、マインドの覚醒・活性化においては、どのようなゴールを設定しようが、どのようなテクニックや小細工を駆使しようが、全くもって意味がないのです。

No.1ゴールとは、この2つの条件を見事にクリアする最もシンプルなゴールです。ですから、このゴールには”力”があるのです。

この世界には、どのような分野でさえも偉大な人物や強者が、数多く存在します。過去の偉人な先達者や賢人たちを含めれば、その錚々たる人物の顔ぶれや迫力、彼らの残してくれた財産、人類の至宝は、想像を絶するものがあります。

それらを垣間見ながら、そして飛び越え、No.1を目指すわけですから、現状の外側すぎるゴールであることに間違いありません。

また、「リアルさ」「明確さ」という点においても、No.1ゴールは秀逸で、非常に分かりやすい。No.2やNo.3と比較して、その上のNo.1のあるべき世界観であったり、必要な条件は明確です。

これとこれとこれをクリアし、達成することができれば、「間違いなくNo.1である」ということを視覚化・目標設定化しやすいのです。

潜在意識にとってみても、非常に認識しやすいゴールと言えます。


No.1の魔力


電車に乗っていると、世の中のいろいろな企業や会社の広告が目に入ってきます。

最もよく見かけるキャッチフレーズ、キーワードといえば、「業界No.1」とか「シェアNo.1」「売上・実績No.1」「顧客満足度No.1」「〇〇達成率No.1」などの謳い文句です。

どのような企業や分野にとっても、”No.1”は本当に魅力的で、人気があるようです。No.1というだけで、何かある種の魔法と呪文の力が宿っているかのようです。これを聞くと人々は、一目散に駆け込んだり、盲目的な信仰心と絶対性と安心感を、なぜか抱いてしまいます。


オリンピックの競技や試合を見ていて、観戦者・視聴者のほとんどの人たちは、金メダルを獲った選手たちばかりに気を取られます。金メダル選手の顔と名前を最もよく覚えます。

銀メダル・銅メダルを獲った選手たちの顔や名前や功績というのは、金メダル選手に比べると、圧倒的に印象が薄くなってしまいます。

能力や技術の面で見たら、その差はほんの僅差である場合がほとんどです。しかし、記録や成果、歴史に名を残すという意味では、天と地ほどの差、格差がそこには存在します。

これらが、”No.1”のもつ不思議な魔力なのです。


No.1ゴールの”功罪”


No.1ゴールのメリットの側の話はこれくらいにして、デメリットの方についても、考察をしていきます。

No.1という世界観とNo.1ゴールの魅力については、ある程度伝わったのではないかと思います。

さて、No.1を目指す企業が多い中で、その風潮に対するアンチテーゼとなる引用からご紹介しましょう。

世の中には、ナンバーワンになることを目標にする会社が数多くあります。ナンバーワンをめざすことは、一時的には社員のモチベーションアップにつながるかもしれません。

しかし、そのことばかりにこだわり過ぎると、とかく急成長指向に陥りやすくなります。またナンバーワンは、一つの業界に一社しかありません。するとナンバーワンになるためには、他の会社を蹴落とすことになります。ともすると、不幸な人を生む可能性もあるでしょう。

会社がめざすべきものは、ナンバーワンよりも「一流」だろうと思います。一流の会社とは、社員やお客様、地域社会を幸せにする会社です。

一流の会社が増えて、共存共栄していく社会になれば、みんなが幸せなのではないでしょうか。「一流」は、限りなく磨きをかけていくことができます。一流をめざす取り組みには、終わりがありません。

塚越寛 著 「末広がりのいい会社をつくる」 第1章より引用



この引用に、私のお伝えしたいことのほとんどが集約されています。

No.1を本気で目指せば、いつかはNo.1になれるかもしれません。しかし、それは多くの場合、自己満足でしかないのと同時に、多くの犠牲を強いる場合がほとんどです。

一番になって、夢がかなってそのときは、大変に気持ちのいいものかもしれません。今までの苦労がすべて報われて、最高の気分とひとときを味わい、過ごせるようになるかもしれません。

しかし、だからといって、それ以上に一番に一体どんな意味があるというのでしょうか。一番だからといって、一番がどうだというのでしょうか。

比較とか、他人を蹴落として、そこに果たしてどんな深い意味と奥深さがあるというのでしょうか。


じつは、一番というのは、それを目指して達成すると、そう長続きするものではありません。その至福とは、一瞬の間に過ぎ去ります。



それこそが、不幸のはじまりなのです。

第一に、一度一番に固執すると、その後は、「一番になっていなければ」「一番を維持しなければ」「一番を獲得し続けなければ」という、強い強迫観念に苛(さいな)まれる可能性が相当にあって、つらい人生になります。

そして、2番手・3番手の人や企業が、あなたやあなたの会社を潰しにかかります。それは、意気揚々とした凄まじいエネルギーを纏(まと)ったもので、ものすごい殺伐とした圧力と圧迫感をあなた(たち)に与えます。

なぜなら、彼らは”一番”を喉から手が出るほどに渇望しているからです。一番を目指し、かつ、一番を手にしたことのない人にとって、一番の人に対するある種の攻撃心は、恐ろしいものがあります。


”作用・反作用の法則”を超越するゴールとは?!


このブログでも過去に何度か登場した「作用・反作用の法則」です。

詳しくその真理や具体例について学びたい方は、こちらのリンクを参照していただきたいのですが、この世の真理とは、「自分の放ったものが、自分に返ってくるだけ」という極めてシンプルかつ単純な法則です。

「因果応報」というだけのことです。

一番を目指し、場合によっては他人を蹴落とし、他人から一番を奪い、自分がようやく一番を達成することができたとしても、そのあと、作用・反作用の法則により、あなたは一番の座を誰かから奪われます。

No.1というのは、イタチごっこだということです。



まれに、ずっと一番に君臨し続ける人や企業が存在します。その秘密とは、”彼らは一番なんか目指してはいない”からなのです。だから彼らは、誰からも一番を奪ってはいない。

そのマインドが結果的に、一番になっているだけの話なのです。彼らにとって一番とは、目的でもなんでもなく、単なる副作用という名の結果に過ぎません。

彼らには、一番なんかよりももっとほかに、崇高で尊く繊細な、かつ大胆で利他的で、社会に大きく貢献するような壮大なゴールが、彼らの魂には宿っているのです。

それが、ほんとうの意味での、”No.1”の秘訣だったのです。


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