コーチングとは、「人生や組織の目標・目的地となるゴールを設定し、そのゴールを実現するためのマインドの上手な使い方」の技術ことをいいます。
私たちの誰もが生まれながらにして持っている「秘めたる潜在能力」の力を最も引き出すゴールとは、一体どういったものなのか、そんなゴール設定の仕方について解説をしていきます。
現状の外側のゴール設定とは?

コーチングにおけるゴール設定の方法というのはとてもシンプルで、シンプルがゆえに無限の多様性と可能性を秘めていると言えます。
そんなゴール設定のルールには、次の3つあります。
- ゴールは「現状の外側」に設定する
- 心から望むこと、成し遂げたいことをゴールとして設定する
- ゴールは人生や組織の各方面にまんべんなく設定する
※ 「現状の外側」のゴールとは、現在の延長線上の未来には到底起こり得ない、自分が大きく変わらない限り、絶対に達成できないような遠く高いゴールのことです。達成方法が現時点ではまるで見えないゴールです。
今日のブログのテーマは1つめのルールに関する話題なのですが、「ゴールは現状の外側に設定する」ようにします。
「現状の外側」というのは、文字通り、「現状のままでは絶対到達・達成できないような遠く高いゴール」「今の自分が大きく変わらないかぎり到底成し得ない世界」「今の段階では達成方法が皆目見当もつかないようなゴール」などと表現することができます。
そのような遠く高いゴールを設定する理由を簡単に説明すると、現状の外側のゴールに設定しないと、与えられた人生、その潜在能力を存分に活かし、引き出すことができないからです。
人生を100%謳歌する可能性や機会を大いに失ってしまう可能性があるからです。
もし、身近で達成可能なのが明らかに分かるようなゴール、いわゆる”現状の内側”のゴールを設定してしまうと、もしくは、目標やゴールそのものを設定しないでいると、それは現状を肯定することになりますから、今の人生の延長線上の未来しか訪れないことを意味します。
このような状態は、私たちの可能性や将来性、無限性に蓋をしてしまうことになりかねません。要するに、刺激のないマンネリ化したつまらない人生に陥ってしまうのです。
ですから、コーチングでは必ず、「現状の外側にゴール設定」をするのが基本のルールとなります。
現状の外側のゴール設定の難しさ

人間の脳の働きを考えた場合、現状の外側のゴールというのは、じつはそう容易なことではありません。
人間の脳には志向性があって、よく「無意識は自動操縦装置そのもの」というような比喩がなされることがありますが、「人間は、頭の中の明確なイメージに向かって自動的に進む」という性質があります。これを「目的的志向(もくてきてきしこう)」と呼びます。
ちなみに、「明確なイメージ」というところが非常に重要なポイントで、明確でないイメージの場合、それは夢想というか空想の域を脱しないものとなり、潜在意識はそういったゴールや漠然としたイメージをスルーしてしまいます。
本質的に言えば、人は、脳内のリアリティに従って判断し、行動をする存在であって、リアリティや明確さが与えられたイメージは、その人にとってホンモノの向かうべき行先になります。
しかし、現状の外側のゴールというのは、一般的に、明確にできないことがほとんどです。
現状の外側というのは、今の自分から想像もつかないような遠く高い位置にある世界・ゴールのことですから、明確にできなくて当然なのです。
脳は行先を明確にしなければ、その本来の指向性と潜在能力を発揮できないのは、先に述べた通りですから、ここにゴール設定に関する矛盾が生じてしまいます。
例をひとつ挙げましょう。
「この世界を幸福で満たす」「この世から貧乏をなくす」なんてあまりにも壮大で、利他的で、現状の外側すぎるゴールを設定した場合、あなたはそのような世界の姿を明確に頭の中で描写、イメージすることができるでしょうか?
そのようなゴールの達成方法や、過程・手段がありありと臨場感を伴って、すぐ目の前にあるかのごとく、リアルに想像がつくでしょうか?
この例はあまりにも極端なものですが、しかし、現状の外側の世界やゴールほど明確にイメージがしずらいということは、伝わるのではないかと思います。
松下電器の経営理念「水道哲学」
産業人の使命は貧乏の克服である。
そのためには、物資の生産に次ぐ生産をもって、富を増大しなければならない。水道の水は価(あたい)あるものであるが、通行人がこれを飲んでも咎(とが)められない。それは量が多く、価格が余りにも安いからである。
産業人の使命も、水道の水のごとく、物資を無尽蔵にたらしめ、無代に等しい価格で提供する事にある。それによって、人生に幸福をもたらし、この世に極楽楽土を建設する事が出来るのである。
松下電器の真使命もまたその点にある。
これは天才経営者で知られる松下幸之助の「水道哲学」と呼ばれるものですが、この文章を読むと、単に「この世界を幸福で満たす(この世から貧乏をなくす)」というゴールよりは、だいぶリアリティが増して、イメージが湧いてきたのではないかと思います。
と同時に、真の天才というか成功者というのは、このように壮大すぎる世界観を頭の中に明確なイメージとして持っていなければ、世に知られる大成功や功績を手にすることはできなかったという重要なエッセンスが、ここでは垣間見ることができます。
「人は、イメージできないことは、達成しようがない」ということもありますが、『人間の能力や成果とは「できる」と思うことによって発揮され、成功の大きさとは、いかに大きく高い目標に対して「できる」と確信することができるかにかかっている』のです。
人の人生はすべて、心のあり方、その人の頭の中に持つ「リアリティ」によって決まります。
現状の外側のゴールを達成するために必要なこと

さて、「現状の外側」という大変明確にしづらいゴールを設定したら、それでは、その次はどうするのかというと、以下のような手段を講じることが必要不可欠になります。
- ゴールの世界までの中間地点を「サブゴール」として設定する
- せめてゴールの世界にいるはずの自分のあり方やセルフイメージを明確にする
- 少しずつでもゴールの世界の一部分、構成要素を明らかにしていく
初めてこの話を聞いた方にとっては、少し複雑に感じるかもしれませんが、これがコーチングにおける正しいゴール設定とゴール達成の方法になります。
ゴール設定が現状の外側ゆえに、ゴールの世界を明確にしづらいため、その不明瞭さ・不明確さを補うために、ゴールへの中間地点となる明確なサブゴールを設定したり、ゴールの世界の構成要素を明らかにすることで、マインドや潜在意識の方向性と行先を明確にし、イメージ力を高め、ゴール達成を加速させたり、ゴールの実現をより確実なものにしていきます、
最も潜在能力を引き出すゴール設定とは?

ここで、前置きがだいぶ長くなってしまいましたが、ブログのタイトルにあるように、最も潜在能力を引き出すゴールとは、じつを言うと、「世界最高」を目指すゴールとなります。
- 世界最高
- 世界のトップ○○
- 私(私たち)は世界で最も○○な存在
- 私たちは○○の世界最高峰
- 世界で最も名の通った○○
- 私たちは地球上で最も○○に貢献する
- ワールドクラス(世界に通用する世界的な国際的レベル)
- ○○において人類の至宝となる存在
- ○○の神様 など
ちなみに、Amazonの企業理念が「地球上で最も豊富な品揃え」「地球上で最もお客様を大切にする企業」になっていますね。
こうしたゴールは、以下の2つの点で優れています。
ひとつめは、ゴールは遠く高いほどいいわけですから、人生をかけて、一生をもってして目指すような「世界最高」というゴールは、現状の外側のゴール設定としてはひとつの理想形になり得るということです。
この世には、一生をかけてでも到達というか超えられそうにないと思えてしまうような偉人や賢人、大成功者や企業が、過去も含めて非常に数多く存在するものです。
その人たちの偉大なる成果と功績を思い描きながら、一方で自分自身が世界最高峰を目指すわけですから、それはそれは遠く高い壮大なゴールとなるはずです。
ふたつめは、世界最高というゴールは、明確さ・リアリティという点で優れています。
ゴールの世界というのはマインドの働きと志向性を考えると、明確にしていくことが好ましい(というより必要不可欠である)わけですが、それは現状の外側のゴールであるほど、難しくなります。
しかし、「世界最高」というゴールは、ゴールとしては非常にリアルで明確なのです。
多くのロールモデルとなる人物やその功績が、世の中には数多く存在しますから、世界最高というゴールの世界観とはこういうものなんだというイメージを大変持ちやすいのです。
「世界最高」「世界で最も○○な存在」という壮大な志・ゴールは、あなたの心の中でひっそりと、そして強く明確に信念を抱けばいいのです。
”ひっそりと”というのは、ゴールはむやみに他人に話すべきではないからです。
ドリームキラーといって、夢やゴール達成を邪魔してくる人、「そんなの無理に決まっている」「何言ってるの?」「頭がどうかしてるんじゃない?」などと言ってきて、自らの思い描く信念やエフィカシー(ゴールへの確信)を押し下げてくる人が多く現れるからです。
こういったところも、コーチングにおける非常に重要なエッセンスであり、「マインドの上手な使い方」のひとつなのです。