こんにちは!!
ライフィングコミットの杉本浩章です。
この記事では、「コーチングとは一体何なのか?」「どのようにしてコーチングが世の中に知られるようになったのか?」また、「コーチやコーチングの意味や語源」についても、詳しく解説していきます。
コーチングはコミュニケーション・スキル?!

コーチングとは、「人生の目標となるゴールを設定し、その目標を実現するためのマインドの上手な使い方」のことをいいます。
世の中に広がるコーチングを見ていると、「自発的な行動を促すコミュニケーション・スキル」だとか、「対話を通じて相手の内面にある答えを引き出す関わり方で、自ら考えて行動する人を育てるためのコミュニケーション・スキル」などと言われている場面が見受けられますが、コーチングという言葉の語源から考えると、これらは明らかな誤りです。
あるいは、ビジネスにおける売上アップ法やメンタル強化法などという狭い枠組みで、仕事のできる部下を育てるだけのシステムでもなければ、部下の指導法やコミュニケーション法でもありません。
そもそも、コーチングという言葉を最初に使い、世の中に広めた人物、コーチングの創始者である「ルー・タイス」という人物がいるのですが、ルータイスのコーチングは、ビジネススキルやコミュニケーション・スキルなどという枠組みでは、まったくと言っていいほど、そのニュアンスが異なるのです。

心理学者、米国自己啓発界、能力開発の世界的権威、コーチングの創始者
アメリカ・ワシントン州生まれ
語源から考えるコーチングとは?

じつは、コーチングという言葉はもともと、ヨーロッパのハンガリーにある「コチ(Kocs)」という小さな村と、そこで作られる馬車の名前に由来しているのです。
コチという村は、現在は2,700人ほどの村人が住んでいて、その場所はというと、ハンガリーの首都であるブタペストから南西に約50キロくらいのところにあります。
以下の写真は、私がハンガリーのコチ村に実際に行って、撮影してきた写真です。






記録によると、15世紀にはすでにこの村で「馬車」が作られていたといいます。
馬車というと、現代の私たちの感覚からすると、エンジンのついていない車のような乗り物を馬が牽(ひ)いているイメージがあると思いますが、この時代の馬車というのは、「大きな車輪のついた大きな荷台」という感じです。
当時のコチ村の村人たちは、この荷台ような乗り物に人や荷物を載せて馬で牽き、運んでいたのです。
以下の写真は、コチ村にある馬車博物館にて、撮影してきたものです。








そして、コチ村でつくられる馬車は、性能がいいという評判から、1800年代前半には急速に周りの国や地域へと輸出され、次第に世界中へと拡がっていくことになります。
この間に、コチという言葉は、村の名前であると同時に、コチ村で作られる馬車そのものを呼ぶ言葉としても、使われるようになっていきました。
コチ(馬車)は、人や荷物を目的地まで運んで行ってくれる乗り物です。
そこから派生して、「人を目的地まで連れて行ってくれる人」のことを「コーチ」と呼ぶようになりました。
これがコーチ(Coach)という言葉の語源なのです。
コーチングの元祖、ルータイスの登場

ここでようやく、コーチングの元祖であり、父とも呼ばれる「ルー・タイス」の登場です。
ルータイスは、アメリカのシアトルにあるケネディ高校の教師で、アメリカン・フットボール部のコーチを務めていました。
ルーは、自身の教え子であるフットボール選手達の能力やパフォーマンスを上げようと、試行錯誤を繰り返していました。
その過程で、ワシントン大学のある教授から学んだことが、ルー自身の考え方や、そして人生を大きく変えるものとなりました。教え子たちを大きな成長や変化に導き、その学びの深さを実感することになったのです。
それがスタートとなって、今度はアマチュア選手達やプロチームのメンタル強化法を、ビジネスマンや企業組織に適用し、人材育成や企業の成長にめざましい成果を上げるようにもなっていきました。
ここではじめて、ルータイスは「コーチング」(Coaching)という言葉を使い、社会に広め、コーチングが社会一般に広く受け入れられ、重要性が認識されるようになったのです。
さらに、今ではアメリカのフォーチュン500の62%、NASA、連邦政府機関、州政府機関、国防総省、警察組織などが、ルータイスのプリンシプルやコーチングを採用しています。
フォーチュン500(Fortune 500)とは、アメリカ合衆国のフォーチュン誌が年1回編集・発行するもので、全米上位500社がその総収入に基づき、ランキングされています。
史上最強のスイマー「マイケル・フェルプス」とコーチング

写真引用: ウィキペディア
史上最強のスイマーこと、水の怪物と称されたアメリカのオリンピック水泳選手に「マイケル・フェルプス」という人物がいます。
彼は、リオデジャネイロ五輪水泳競技終了の時点で、
・ 前人未到のオリンピック金メダル通算獲得数23個
・ オリンピックメダル通算獲得数28個
という偉業を成し遂げました。
じつは、マイケル・フェルプスの水泳コーチには、「マーク・シューベルト」という国際水泳界のトップコーチにして、コーチングの創始者であるルータイスの愛弟子として知られる人物がついていました。
マーク・シューベルト氏は、「冬の旅」や「白鳥の歌」などの数々の名曲で知られる、オーストリアの大作曲家として有名な「フランツ・シューベルト」の末裔(まつえい)です。
マーク・シューベルトがマイケル・フェルプスのコーチについたのは、フェルプス選手がまだアメリカ国内の有望選手の一人にすぎなかった13~14歳くらいのことだそうです。それ以来、幼いフェルプス選手に、目標達成のためのコーチングが施されるようになりました。
フェルプスの前人未到の実力と偉業を引き出した人物こそが、じつは、マーク・シューベルトだったわけです。
じつは私は、何度かマーク・シューベルト氏や、ルータイスの奥様であるダイアン・タイス氏に実際にお会いしたことがあります。
アメリカのカリフォルニア州ハンチントン・ビーチにあるマーク氏のご自宅に直接伺ったり、マーク氏が実際に水泳指導をしているプールにて、指導風景を拝見させていただいた大変貴重な体験でした。2016年7月のことです。






それにしても、私がマーク氏の指導されるプールを訪れたとき、真っ先に気になったというか驚いたのが、プールの水のきれいさと透明度でした。屋外のプールであるはずなのに、本当に水が透き通っているのです。
気になってそれをマーク氏に尋ねると、その秘密は巨大なプールの浄化装置にあることを教えてくれました。
あまりの唖然というか驚愕ぶりに、つい写真を撮るのを忘れてしまったのですが、その浄化装置というのは、一軒家丸々を占めてしまうかのような巨大さでした。
さすが、世界のトップコーチが指導し、世界トップレベルの選手たちが集う場所というのは、その待遇や、彼らを迎える設備の豪華さと徹底ぶりに、驚くほかありませんでした。
話が少々脱線してしまいましたが、コーチングの話に戻ります。
マーク・シューベルトがフェルプス選手に徹底させたこと、それは自らの成功イメージを
ビジュアライゼーションすることでした。
「ビジュアライゼーション」とは、自分がまさにそれを実体験しているかのように、リアルに頭の中でイメージをすることです。コーチングにおける最も重要なゴール達成技術のひとつになります。
フェルプス選手は毎晩ベッドに入ると、天井のあたりを見つめ、そこにオリンピックの決勝戦で泳いでいる自分の姿を詳細かつ明確にイメージしました。
他の出場メンバーは誰で、自分はどのコースを泳ぎ、どう競い合って勝つのか。ターンでタッチするタイミングを100分の1秒レベルで、リアルに思い描いていたといいます。
コーチングによるゴール設定・ゴール達成とは?
コーチングとは、① 人生の目標である「ゴール」を設定し、② そのゴールを実現するための「マインドの上手な使い方」のこと
- ゴール設定
- ゴール達成
① コーチングにおけるゴール設定とは?

コーチングにおけるゴールとは、「人生における目標・目的地」のことをいいます。
あるいは、組織の場合、組織の向かうべき行き先、組織の目標のことを表します。
そして、コーチングにおけるゴール設定には、「3つのルール」が存在します。
そのルールを満たした人生や組織の目標のことをゴールと呼ぶのです。
- ゴールは「現状の外側」に設定する
- 心から望むこと、成し遂げたいことをゴールとして設定する
- ゴールは人生の各方面にまんべんなく設定する(バランスホイール)
※ 「現状の外側」のゴールとは、現在の延長線上の未来には到底起こり得ない、自分が大きく変わらない限り、絶対に達成できないような遠く高いゴールのことです。達成方法が現時点ではまるで見えないゴールです。
人生(や組織)において、各分野や方面にバランスよく複数のゴールを設定することを「バランスホイール」といいます。
- 仕事・キャリア
- お金・収入・資産
- 家族・人間関係・人脈・恋愛
- 趣味・生きがい・住環境
- 運動・スポーツ
- 生涯学習・教育・語学・今後の挑戦
- 健康・美容・鍛錬
- 地域活動・社会貢献
※ 上記はバランスホイールの一例になりますが、すべての分野を厳密に一つずつゴールを設定していく必要はありません。バランスホイールの分野や内容、ゴールの中身は、自由に創造したり、決めることができます。
今の自分には大きすぎると思うようなゴールを設定することからはじめましょう。
そして、それを現状のほうに引き寄せるのではなく、そのゴールに向かって自分を成長させていきます。
ゴールに圧倒されないくらい、今よりずっと大きな自分になるのです。
ルー・タイス(コーチングの創始者)
② コーチングにおけるゴール達成とは?

人生を変えたい、組織に大きな変革を起こしたい、将来の自分を今よりもずっとよくしたいと願い、考える人たちが、無理をしたり、行動を急に変えようと努力を試みたりすることがあります。
一時的には、それでパフォーマンスが上がることも、確かにあるでしょう。
しかし、時間が経つにつれて、また元通りの自分へと戻っていってしまうことがほとんどなのです。
それは、人間には「ホメオスタシス」といって、非常に強力な現状維持機能があるからです。
この維持しようとする現状の中身の正体はというと、「セルフイメージ」といって、脳内に記憶・蓄積された「自分とはこういう人間なんだ」という自分自身に対する自己イメージや自分像によって決まります。
人の無意識・潜在意識には、このセルフイメージに沿った自分や人生を構築していこうとする働きがあるのです。
ですから、セルフイメージを変えないかぎり、人間は決して変わることはできません。
このセルフイメージを根本から変えていく技術や方法論、自己変革法のことを「コーチング」というのです。
ここで、コーチングのゴール達成における最も重要なエッセンスとなる、「ルータイスの方程式」についてご紹介しましょう。
I×V=R
I(Imagination)× V(Vividness)= R(Reality)
イメージ(想像力)に鮮明さ(臨場感)が伴うと
リアリティ(現実)になる
鮮明でありありとしたイメージの描写が、脳内のリアリティをつくるのです。そして人間は、脳内に蓄積されたリアリティに従って判断し、また、行動をします。
ゴールを達成するために最も重要なことは、脳内における「ゴールの世界のリアリティ」です。
それは、ルータイスのコーチングの核心とは、「ゴールの世界を強くリアルに感じると、ゴールが現実になる」というものだからです。
※ リアリティとは、セルフイメージを含めた脳内におけるその人にとっての真実のことであり、自分自身のあり方と、そこから見える世界の姿です。
前述した、前人未到のオリンピック金メダル獲得数を誇るマイケル・フェルプスが行っていたビジュアライゼーション(視覚化イメージ)とは、まさにこのゴールの世界のリアリティを強化する目的で、マーク・シューベルトから指導されていたものです。
コーチングでは、脳内での現状よりもゴール側のリアリティを高めるために、ビジュアライゼーション以外にも、「エフィカシー」「アファメーション」「セルフトーク」「バランスホイール」などの技術が存在します。
コンサルティング・ティーチングとの違いは?
① コーチングとコンサルティングの違いとは?

コーチングとコンサルティングは、似ているように見える人もいるかもしれませんが、まったく異なるものです。また、両者は相反するものでもなければ、相性の悪いもの同士でもありません。
両立ももちろん可能です。
コンサルティングというのは、それぞれの分野における具体的な技術や方法などのアドバイスをすることを指します。
例えば、経営コンサルタントの場合、会社や組織の経営の改善・発展のために、コンサルタントが経営に関する具体的なアドバイスを経営者や幹部相手にするものです。
対して、コーチングの方はというと、上記のような特定の分野に関する具体的な手法などのアドバイスをするというのではなく、あくまでも「マインドの使い方」にのみアプローチをし、クライアントのマインドやクリエイティブ性を刺激し、彼らが抱えるであろう数ある課題や問題点について自己解決を図ろうとするものです。
② コーチングとティーチングの違いとは?

コーチングとティーチングの違いも、質問としてよく聞かれる内容です。
前述したとおり、コーチングは特定の分野に関する具体的なアドバイスや方法論等の教授をするものではありません。
一方、ティーチングというのは、やはり特定の分野に関する技術や方法論等の教授や伝承を意味する言葉ですから、コーチングとはまったく異なることが分かります。
コーチングがアプローチする対象はマインド(脳と心)であって、その人の自己変革性やクリエイティブ性にのみフォーカスをします。
まとめ

コーチングとは、人生や組織の目標であるゴールを設定し、そのゴールを実現するための「マインドの上手な使い方」のことをいいます。
そして、人生の目標であるゴール設定には、3つのルールが存在します。その3つのルールを満たした人生の目標のことを、コーチングでは「ゴール」と呼ぶのです。
- ゴールは「現状の外側」に設定する
- 心から望むこと、成し遂げたいことをゴールとして設定する
- ゴールは人生の各方面にまんべんなく設定する(バランスホイール)
※ 「現状の外側」のゴールとは、現在の延長線上の未来には到底起こり得ない、自分が大きく変わらない限り、絶対に達成できないような遠く高いゴールのことです。達成方法が現時点ではまるで見えないゴールです。
推薦図書: ルータイス 著
- アファメーション
- Smart Talk for Achieving Your Potential